シンリード@理系読書

理系大学院生による書評と読書感想文

「ファナックとインテルの戦略」工作機械の革新史【要点まとめ・レビュー】

ファナックとインテルの戦略 柴田友厚 著

ファクトリーオートメションに興味があるため読んでみた本。

【要点&感想】

 ファナックのCNC装置には、インテルのMPUというソフトウェアで制御する半導体デバイスが導入されている。これはIBMなどがパソコン業界にMPUが導入される6年も前のことである。しかしMPUの導入には、小型化やコスト削減、柔軟性工場などのメリットもありながら、当時は技術的な不確定性もあって性能劣化のリスクもあった。米国などの大企業には航空機産業なども多く、性能劣化を避けてMPU導入には消極的であった。しかし、日本には中小企業も多く、MPU導入に積極的であったのだ。ファナックからのMPU需要は、インテルが当時主力としていたDRAMからMPUへ事業をシフトさせる決断の要因ともなった。

 そして日本のNC装置の成功要因としては「モジュール化」が大きい。標準化と特注化の両立を成し遂げたのだ。また、 NC装置と工作機械は補完関係にある 。そこで「NC装置と工作機械を自社で一貫して作るかどうか」といった分岐が生じる。米国では一貫体制の企業が多い中、ファナックのNC装置は工作機械を扱う多くの中小企業へ売られるのである。これが、見事にハマったのだ。多くの企業に売るために、互換性の高さを意識して作られ、さらには、それぞれの企業から使用時のフィードバックが返ってくるため、改善点も大量に見つかって相互に強化されていくからだ。DMG森精機は、NC装置メーカーと連携を顕密にとることで、工作機械メーカーとしては後発ながらも成長を遂げた。そして、パソコンとCNC装置の融合に成功し、NC装置メーカーごとに操作方法が異なるという問題も解決した。

 工作機械の革新史から、技術転換時には「後の者が先になり、先の者が後になる」という産業秩序が起こりうることが見て取れる。これらの革新は、スタートアップでなく既存企業がの新規事業として始まったのも覚えておきたい。そして現在の注目分野である、自動車本体と自動運転装置の関係性もNC装置と工作機械の関係に近い。過去の教訓から、自動運転装置専門の方がうまくいくのかもしれない。そして中国政府が掲げる「中国製造2025」の主要10分野にはCNC工作機械も入っている。工作機械はハイエンドなものを輸入し、NC装置が着かないローエンドなものを輸出するといった状況である。NC技術が日本に追いつくのは楽観的に見るとまだまだであり、現状では中国の工作機械の生産が増えるにつれて、日本のNC装置の需要が増えるという分業構造が維持されるだろう。これは、補完材に着目することで共存共栄構造を作り出す可能性を示唆している。